元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
「………そう、ね。」
震えている、あの子の声。
無意識なんだね。
僕が、僕達が怖い?
ねぇ、
「………………き。」
「…………え…?」
「っ、」
ハッとして、両手で口を塞いだ。
僕は今、何を言おうとしてた…?
その一言は、言ってはいけない。
きっとみんなが彼女に言いたいはずだから。
逃げてばかりの卑怯な僕が、その一言を言葉にしてはいけない。
「……元気?」
変に思われないよう、話を変える。
ここで会話を終わらせればいいものを。僕は続ける。
なんで?今さら話す事なんて、僕にはないくせに。……言えない、くせにね。
「…うん、元気だよ。」
_気付いてる?
笑えて、ないんだよ。今にも泣きそうな顔、してるんだよ。
なんて、言えないね。
そんな顔をさせているのは、紛れもない、僕なんだから。
どうして僕は、傷付けることしかできないんだ。
いつも、いつもそう。
誰かを庇う事なんてできなくて。いつだって自分が可愛くて。
ごめん。ごめんね。僕はまた、傷付けてしまうかもしれない。