元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
「…………あ、の。もう…」
そう言って走り出した彼女の腕を、
「…………っ!?」
僕は、無意識に掴んでいた。
「…………あ、きら?」
どうして?と、彼女が言う。
でもね。僕にも、分からないんだ。
どうして彼女の腕を掴んだのか。
体が、勝手に動いていたから。
きっと、きっと。僕が、彼女を諦めきれない証拠。
「離して…?」
彼女は、震えながらそう言って、僕から距離をとる。
「さよ、なら………」
なんで、なんで?
そんなお別れみたいな言葉、言うの?
僕は、その言葉はキライだよ。
欲しくない。欲しいのは……………『またね』だから…
…なんて、ワガママかな。
「……ねぇ、僕は、僕達は…嫌い?」
そんなの、愚問なのに。
口から出た、その言葉は。
僕達と彼女をつなぎとめる、唯一の希望。
「…………っ、」
「ねぇ、答えて。」