元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー



そう言って、逃げようとした彼女の腕をもう一度掴む。

決して、逃がさないように、と。




「……………!」




「答えるまで、離さないから。」




そんなこと、無茶だって。
わかってるのに。

彼女は、優しいから。


だから、自分を傷付けた僕達でさえ『嫌い』と言えない。



それを分かっていて、彼女に聞く僕は、…………卑怯者。



「…や、だ!離してよっ!」


目に涙を浮かべ顔を歪める彼女。


「………それが答え?」




「…っ、みんなっ、私を捨てたくせに…っ!なんで、なんで今更『嫌い』かなんて聞くのよ…!私はっ、『嫌い』かどうかも分からないの!忘れようとしても忘れられないんだもん…………っ!!」



泣き叫ぶ彼女に胸が締め付けられる。


あぁ、また?
また、僕は傷付けた。


__『嫌い!みんなのことなんて大嫌いよ…っ!!』





頭の中で、”あの日”の言葉が蘇る。



ドクン、と。


心臓が嫌な音を立てた。



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