元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー



「……っ」


噛み締めた唇から血が滲む。

やり場のないこの気持ちを、抑えるかのように。



そんなあたしに未だに気付いていない二人は、話を続ける。


「………良いよ。返事はいらない。」



「え…」



「…伝えられただけで十分だから。」



ようやく冷静さを取り戻したのか、アイツが喋り出す。




伝えられただけで十分…?


アンタは十分かもしれないけど。
後で悩むのは桜なのよ?


ムカつく。ムカつく。



桜を捨てたくせに。

…あの子を、泣かせたくせに。



なんで今更想いを告げるの。
アンタにそんな資格は、ない。


あたしは、何をしてでもあの子を守るの。


桜が幸せなら他は誰が不幸になろうが知らないわ。


桜はあたしが守るから。

だから、ずっとあたしの隣で笑っていて。

それは結局、あたしの…





『エゴ』なんだろうけど。




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