元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
黒い影
【慧side】
「頼む!頼むからやめてくれ…!」
目の前で男が苦しそうに顔を歪めながら地面に這いつくばる。
やめてくれ、と喚きながら。
うるさい、うるさい
黙ればいいのに。
「耳障りだ」
そんな声が聞こえて隣に視線を向ければ、その先には蓮。
低く唸るようなその声に、男は震え上がる。
僕も思わず怯みそうになる。
蓮は僕と同じ事を思っていたようで。
男に蔑むうような視線を向ける。