元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
ぱっと脳裏に思い浮かんだ人物に目を向ける。
「…なんだ」
―――我らが総長様、蓮に。
蓮はソファに寝転んだまま、目線だけをこちらに向けた。
相変わらず、無表情だなあ。
そう思いつつ、蓮に頼み込む。
「頼みがあるんだけどさ。…あの二人、止めてくれない?」
顔は蓮の方を向いたまま、櫂と伊織の方を指差す。
まだ喧嘩の声がする。
こっちの気にもなってよ、って感じだよね。
「……めんどくせぇ」
無表情のまま落とした言葉。
「めんどくせぇ」って…
僕だって面倒くさいよ。
だって一回言っただけじゃ喧嘩終わらないし。
いっつも自然に解決してるからね。
……今回は、怒声が耳に響いてうるさいから。
倉庫はよく音が響くんだよなあ…
だから一刻も早く喧嘩を止めて欲しい。