元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
キョロ、と周りを見渡す。
蓮は数秒おいてから、口を開いた。
「渉は…………」
「総長っ!!」
蓮が言い終わる前に、勢い良く幹部室の扉が開かれた。
「どうしたの、篠原」
慌てた様子で入ってきたのは篠原。
来龍の幹部候補生。
ここは幹部室だから、余程の事がない限り幹部以上は入れない。
ということは、だ。
何か一大事だということ。
再度篠原に問いかけると、肩で息をしながら言葉を吐いた。
「渉さんが………っ!大変なんです!」
「どういうことだ。」
「っそれが…」
威圧感のある蓮の声に、篠原は一瞬怯むが、言葉を続ける。
「…さっき渉さんが倉庫に来たんです。…………後ろに、”男”を引きずりながら…」
「”男”を引きずりながら…?」