元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
もうちょい、こう、幹部としての威厳をさぁ…
もてないのかな。
「あーあーなんにも聞こえねぇー」
「うっざ!伊織キモうざ!」
…無理か。
額に手を当て、俯く。
本日何度目か分からない溜息が出た。
二人に声をかけようとすると、僕が言葉を発するより先に櫂と伊織がこちらを振り返った。
「慧!!伊織ってうざいよな!?」
「櫂の方がうぜぇ!」
「ちょっと黙って。」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を言葉でぶった斬る。
無理矢理にでも止めないと、終わらないし。
渉のところに早く行きたいのに…
ちっ、と無意識に出た舌打ちが耳に入ったらしい櫂と伊織は、大袈裟な程肩を揺らす。
「喧嘩してる場合じゃないんだけど?………下で大変な事になってるんだ。頼むから大人しくしててよ…」
それだけ言うと、ピタッ、と動きが止まった二人。
「大変な事…?」
先に声を零したのは、櫂だった。