元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー




「そう。」



俯き、目を瞑って答える。



閉じた目の奥で、―――あの子が泣いているような気がした。


チカチカ、チカチカ、こっちは眩しい。

眩しい、筈なのに。

あの子の向こう側は、どうしてこんなにも暗いのか。



暗い、闇い、儚い。





―――幻想、か



それにしてはなんだかリアルで。



でも、目を開ければ、そこには何も無い。




なんで、



……………今のは…、





「大変な事って、なんだよ」




櫂の言葉に、勢い良く顔を上げる。


僕はハッとしたように、先程の話を思い出す。




―――今のは、何だったんだろう。




そんなことを思いながら、櫂の方へと意識を向ける。





「あ、あぁ…。さっき篠原が来てたんだけど、渉が帰ってきたらしい」




”後ろに男を引きずりながら”




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