元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
僕の言葉に櫂は顔を歪める。
「どういう事だよ、それ…」
「僕にも分からない」
頭を横に振る。
櫂が気になっている様に、僕だってさっきからずっと気になってる。
”男を、引きずりながら”、なんて言葉を聞いて気にならない方がおかしいと思う。
誰だってその不可解な言葉に悩まされる、はず。
「……なんで渉が、そんなこと…」
伊織だって同じで。
俯いている伊織が零した声は、密かに震えている。
その表情は見えないけど、恐らく櫂と同じような顔をしてるんだろう。
シン、と辺りが静まり返る。
いつもとは違う空気が、息苦しい。
そんな空気を裂くように、僕は口を開いた。
「行ってみなきゃ渉がどうなってるのか分からない。…だから、この目で確かめに行くんだ。」
実際に自分の目で見なければ分からない。
そう、いつもより張りのある声で言った。