元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
下に降りて、篠原から聞いた話より悲惨な事になってたら、どうするんだろう。
そういうことも踏まえて、今落ち込むな、って言ってるのに。
…分かんないかな。
考えていた事を頭の片隅に置き、階段を降りる。
「……………」
トントン、と規則正しい音が周辺に響く。
櫂と伊織はもう降りたのか…
早いな。
―――カツン、
最後の段を降り終え、倉庫を見渡す。
そして僕の視線は、倉庫の”ある一点”で釘付けになっていた。
「な、に、これ…」
思わず言葉が詰まる。
喉まで突っかかって、次の言葉が出てこない。
中央の柱には、男が縛り付けられていて。
「っや、やめてくれ!俺じゃなっ…ぎゃあああ!!」
―――渉が、縛り付けられたまま”やめてくれ”と悲願する男を、無言で蹴り続けていた。