元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
仁があたし達を呼び出した理由も、本当はわかっていた。
とぼけていたただけで、本当は。
修哉と仁が”調べ出した”事も知っていた。
「……始まるのね」
小さく呟いたあたしの声は誰にも拾われない。
むしろ、拾ってくれなくていい。
あたしの前を歩く3人の背中を見つめながら、そう思った。
―――始めようか。
『私は好きだなあ』
(あの子がくれた言葉)
『見えないモノに怯えないで。―――は一人じゃないから。』
(溢れだした心)
『目を開けて、前を向いて?きっと、世界が変わるから』
(変わったあたしの世界)
大好きで大切なあの子が幸せになれるなら何でも良かった。
『……ごめん、ごめんね。今だけは、お願い。独りで考えるから』
なのに、どうして
あたしからあの子を奪ったくせに、どうして手放すの
あの子が幸せになれないなら、―――なんて要らない。
(消えてしまえばいい)
狂気にも似たあたしの心は酷くどす黒く染まっていく。
―――あの子に、幸せを。