元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
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「っ知らねえ!俺はただっ、」
「黙りなさいよ」
「っぁ、あ゛ぁ!!」
男の顔面に拳をいれると、血を流し気絶した。
拳に纏わりついた血が気持ち悪くて反吐が出る。
こんな何の価値もない男を殴ってしまったのか、と。
ちっ、と舌打ちをすれば、真横に気配。
反射的に足が動く。
その気配を、捉えようと。
敵?―――だけどそうではないと悟り、足を止めた。
暗闇の中で段々とその顔が露になる。
「…仁」
紛らわしいわよ、と睨みつけるものの仁はヘラヘラと笑うばかり。
「なあに?仁くんも顔面パンチがお望みかしら」
「いやっ、遠慮します。勘弁して。マジで。」
あたしがにっこりと微笑みながら拳をスタンバイすれば、仁は慌てて平謝りする。
ふ、無様。