元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
イライラが顔に出ていたのか、仁が慌てて宥めにくる。
「も、もう帰ろっか?」
ビクビクしながら言う仁に、笑顔を返すあたし。
うん、それでいいのよ。
仁があたしに怯えてると、制圧してるって感じで愉快。
ほら、あたしって基本優しくないし?
「帰りましょう」
さっきより少しばかりか気分が良くなったあたし。
愉快な気分で足を進めるあたしの耳に、
「お、前らは……っ、」
突然聞こえた、男の声。
呻きながら、呟いたその言葉に足を止める。
……もう、全員気絶してると思ってたんだけど。
そうではないのか、と思いつつ。
あたし達の攻撃を喰らってもなお気絶していない男が珍しい。
その事実に少しだけ興味が湧いた。