元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
だけどそれは、気まぐれ。
あたしが足を止めたのは、ほんの少しの興味だから。
たかが興味本意。
されど興味本意。
気絶してなくとも呻く男にとって、あたしのただの興味本意は奇跡に近いのかもしれない。
幸か不幸か。
男の最後に発した言葉が、あたしの耳に届いた。
「…狂姫とっ、騎士……っ」
”狂姫”と”騎士”
「………そうね」
ポツリと小さく呟いたあたしの声は、誰にも拾われることはなく。
その言葉に、どれだけの意味があったのか、
―――本人すらも、わからないかもしれない。