元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
「あたしが…?」
そんな、馬鹿な、と呟く。
だけど蓮は無表情で続ける。
「…俺だって、普通の人間だ。人の心が透視できるわけじゃない。でもな、麻里奈。あの時のお前は、誰から見ても分かるほど心で泣いてた」
笑顔なのに、笑っていなかった、と。
言う蓮に、麻里奈ちゃんの瞳から涙が溢れた。
「っ騙されてないなら、あたしなんてなんで姫にしたの…!」
「……言っただろ。お前の心は泣いてた。誰かに愛してもらいたいって、」
ホントは、ずっと思ってたんだろ、と。
「俺達はそんなお前を守りたいって思った。麻里奈が根から悪い奴なら、姫になんてしない。それぐらい見抜けるぞ」
「……っふ、ぅ…っ…」
麻里奈ちゃんは口を押さえて泣いた後、ゆっくりと話始めた。
「……暗い過去があったわけじゃないっ…でもっ、ただ愛して欲しかった…っ」
「…あぁ」
「っ後から来たあの子が愛されてっ、あたしの居場所がなくなるんじゃないかって怖かった…っ」
「……麻里奈、」
蓮はポン、と麻里奈ちゃんの頭に手を乗せる。
私はそれを、黙って見つめる。
「俺達は、一度掴んだ手を放すほど馬鹿じゃない」
「っれ、ん…っ」