元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー




「私、蓮が自分を責めるのを見てるのなんてやだよ……っ」



「でも……っ、」





「私に悪いと思ってるなら、自分を責めないでよ………」




私、裏切り者だと蔑まれた時より、苦しいよ。





「総長失格なんて言わないでよ…。蓮は、ちゃんとみんなを見てたよ。守ってた」



「…っ、大切な人を守れなかった…守れてなんか、ないんだ」




「…………あのね、大切な人を守るのに、全部守るなんて無理だよ。誰かを犠牲にしなきゃいけない時がきっと来る。…その犠牲が、私でいいんだよ」





「桜はっ、俺達にとって大事な存在なんだ…っ!犠牲なんて悲しい事言うな……っ」





「どうして…?来龍襲撃の後、私が姫をやめて、周りに来龍襲撃の事情が広まることはなかったでしょ?私、みんなを守るために姫をやめて良かったと思ってるよ」



「だからって…っ!桜の優しさに、俺達は漬け込んだっ」




……私は決して優しくなんか、ない。




私が姫をやめたのは、私の為だよ。みんなを守りたいから、私が合意してやめたの。



私の勝手だよ…。






「みんなの悲しい顔なんて見たくないの……。だから蓮、泣かないで。…笑ってよ、ねぇ」





なんで、





「なんで泣くの、蓮…」






私はみんなに笑ってて欲しいんだよ。




私はどうなってもいい。蔑みの視線も辛辣な暴言も耐える。耐えられるよ。




だから、みんなは幸せになって欲しい。





「蓮が笑ってくれなきゃ、私…っ、裏切り者の鎖を背負った意味無いよ…!」





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