元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー
大切な存在
【桜side】
「桜…?大丈夫?」
「ありがとう、麗華」
麗華に声をかけられ、眉を下げて微笑む。
―――あれから私は、気付いたら麗華の家の前にいた。
息切れして髪もボサボサで汗だくだった私を見て、麗華は慌てて家の中へと招いてくれた。
麗華の家のシャワーを借りて、渡されたタオルで髪を拭く。
……無我夢中で、宛先も無く走って。
麗華の家の前に辿りついたのはきっと、
「桜」
「……、なあに?」
麗華に突然声をかけられ、内心驚きながらも笑って返事をする。
麗華の声が、いつもより真剣なのは何故?
「……っ何が、あったの…」
そんな瞳で見ないで。
私の為に悲しい顔をするのはやめて。