元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー


「桜。言ったろ、掴んだ手は離さないって」


「…っ、だってそんな、」


ぎゅっ、と胸元を握り締める。

なんで、なんでそんなこと言うの。わたしはもう戻らないって、決めたのに。

どうして揺るがすようなこと言うのよ…。


「…僕も同じ気持ち」


黙りこくっていたわたしに、慧が優しく声をかける。


「俺も。今さらだってわかってるけど、」


「それでも、桜がいなきゃダメなんだ」


「…ごめんな、桜。俺たち、やっぱり諦めきれねえ」


伊織、渉、櫂…っ。



「わたしだって、ほんとはみんなと一緒にいたいよぉ…っ」



「桜さん、戻って来てください」


篠原くん…。

わたし、いいの?また、みんなと一緒にいてもいいの?




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