幕末カレシ~新撰組に飼われた蝶~
愛しい人
「…ん…」
目が覚めると首にズキリ、と小さな痛みがあった。
…そうだ、私…
「鈴音…」
暖かい、懐かしいような声が聞こえた。
「土方さん…」
「鈴音ちゃん、ごめんね、君を守れなかった」
「沖田さん…いえ、そんなことないです。私、何度も皆さんに守られ、助けられました」
そう言って微笑む。
いつの間にか土方さんの胸板が目の前にあった
そして土方さんの腕の中に居ることにきづく。
「土方さ…え?…」
広い背中に手を回すと、ぬるり、と温かい何かが手につく。
…血だ。
「土方さん!怪我を…!!」
「大丈夫…だ…このくらい…」
そう言いつつも、意識が朦朧としているのか、言葉が途切れている。
「土方さ…」
「トシ!おい、新八、一!トシを運んですぐに治療を!」
近藤さんが駆け寄り、永倉さんと斎藤さんに指示を出す。
じんわりと視界がぼやけて揺れ、涙が頬を伝った。