教室で愛を叫ぶ
そして三階まである北館の二階に上がり、先生は一つの部屋のドアを開けた。
「………失礼しまーす」
他の先生がいるのかも、と思い挨拶をしてみたが誰もいなかった。
「ここに置いてくれる?」
あたりを見回していた私に先生が声をかけ、慌てて視線を先生に戻した。
ドサリと置かれた冊子の上に、崩れ落ちないように慎重に持っていたプリントを置いた。
誰もいない静かな部屋には少しの音でもよく響く。
ざっと、直ぐ近くで先生の足音が聞こえた。
「わざわざ悪かったな?」
さっきよりも緊張が増したけれど、それを誤魔化すように先生に笑顔を向けた。
「全然っ!」
「まぁさぼった罰は、これで許してやろう」
「えー、これ罰だったのー?てっきり私と二人きりになりたいからかと思った」
からかうように言えば、相変わらず言葉を詰まらせる先生。
「………………………そんなはずないだろう」
下手くそに、先生は笑顔を作って笑った。
どきんと跳ねる鼓動。
いい跳ね方でもあり、たらりと背筋に汗が流れそうな悪い
跳ね方でもある。
……………本当、先生は私に向かってちゃんと笑わないよねぇ。
フッと自虐的に笑って私は満面の笑みで先生を見返した。
「だよね?そんなこと分かってるし」
そう言って手を振ってこの場を去ろうとするけれど________。
運悪くチャイムが鳴ってしまった。
……………うわ。
最悪のタイミング。
チャイムのせいで私は逃げるタイミングを逃してしまった。
あーーーーー、もう。
「…………悪い。遅刻させちまったわ……」
申し訳なさそうに謝る先生に大丈夫と返す。
こんなことには謝ってくれなくていいから、ちゃんと私に笑いかけてほしいのに。
それにここまでサボり続けている私が、一時間サボったからって特に何も変わらない。
どこか気まずい雰囲気が流れる。