教室で愛を叫ぶ
「…………ぃ。…おい!」
体が揺さぶられている感覚に意識が浮上する。
「おい!起きろ!」
「………んっ」
ゆっくりと目を開けて、体を起こした。
一瞬眩しくて目を細めるけど…。
目の前にあるものが何かを認識した時、カッと目を見開いた。
「せ、先生」
慌てて頬に触れてよだれを垂らしていないか確認。
うん、大丈夫。
まだ完全に覚醒しきっていない頭で、とにかく笑みを作ることだけを考えた。
「やっと起きたかー」
一瞬先生は私の顔を見て顔を引きつらせたものの、次にはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた先生。
かなり失礼な。
でもさ、今日数学って4時間目じゃなかったっけ。
先生が担当の数学の時間割だけは完璧に覚えている私。
あとはかなりどうでもいいので、全くだけれども。
「せんせ、今って何時間目?」
「4時間目だ」
………徹夜の威力、恐るべし。
はは、と思わず苦笑いを零す。
「いい度胸してんなー、お前。授業中に一番前の席で永遠と寝続けるわ、起きたと思えば思いっきり校則無視の化粧してるわ」
………はて、化粧とは。
先生の言葉に疑問が生じたものの、直ぐに夏穂が朝化粧をしてくれたんだと思い出した。
でも確実に濃いことだけは分かるけど、どんなふうになっているのかは鏡を見ていないので分かんない。
「いや、校則なんて破るためにあるんでしょう?」
「んなわけあるか!」
「やだ先生、頭かたーい。もうおじいちゃんなんじゃない?」
「まだ若いわ!20代半ばだ!!」
「でも大丈夫。先生が老けても、私は一生ダーリンを愛してあげるから」
「いらん世話だわ!!」
寝起きのくせに、ここまで頭が回る自分に軽く感動した。
いつもは低血圧気味だから、暫くはボーッとしていつも朝の数分の記憶が曖昧だ。
「そもそもな、今は授業中だぁ!!」
「私を起こした先生が悪い。何?そんなに私とお喋りしたかったの?あらやだ、照れちゃう」
ハッと、先生を嘲笑うように笑みをこぼした。
先生に無駄な辛味をすることが、私は大好きです。
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「先生、怒るとストレスで禿げちゃうよ!でも何度も言うけど、禿げたダーリンも好きだかんね!」