教室で愛を叫ぶ
………ヤンキーだったら絡まれるよなぁと思いながら顔をゆっくりあげる。
そしてぶつかった相手の顔を見た。
相手はヤンキーとは程遠かった。
「…………遠藤美海?」
こげ茶の見るからにサラサラそうな髪、パッと目につく細くて長い足、ちっさい顔、そしてその顔は_______かなり整っていて。
「………ま、ま、ま、ま、まって!!!み、美海美海!!!!この人……っ、まっくん先輩じゃんんんんんんん!!!!!」
この学校で読者モデルをしていると有名な先輩だった。
絶叫に近い叫びをあげた夏穂に思わず視線を向けてしまうと、急に夏穂に腕をとられた。
「美海、美海美海美海!!どうしよう!ねぇ、どうしよう!?あの先輩だよ!?あたし大ファンなんだよ!?!?!?」
「え、ちょ、夏穂…」
「やばいやばいやばいやばい!!!!すっごいかっこいい!!顔ちっさ!足長!細!!ねぇ、どうしよううううううううう!」
「か、夏穂「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」
「……………」
我も忘れて私の腕をぐいぐい掴みながら先輩に視線を向けたまま叫びたてる夏穂に私はもう何も言えなかった。
恐る恐る先輩に視線を向けると……ただ夏穂の勢いに戸惑っているだけで。
「……夏穂!!」
これはまずい、と思いいまだ興奮状態の夏穂に思いっきり叫んだ。
「………せんぱぁぁ……………い………」
そしてやっと周りを認識したのか、固まってしまった夏穂の腕をしっかりと固定した。
「………色々すみませんでしたっ!」
そしていまだあっけらかんとしている先輩に頭を下げ、夏穂の腕を離さないように回れ右をして教室へと駆け出した。
……本当、恥ずかしいったらありゃしない。
先生に対するテンションと、他の人に対するテンションは少し私は違う。
先生に向けは夏穂みたいなテンションだろうけど、実際にこう騒がれると恥ずかしくて仕方がない。
周りの視線が嫌に気になり、ぎゃーぎゃー騒いでいる夏穂の頭を軽く叩いて足を早めた。