教室で愛を叫ぶ
ことは突然に起きた。
夏穂とご飯と教室で食べていれば先輩たちが乗り込んできたのだ。
しかし夏穂はすぐさま教室の外へ避難してしまったが。
あんにゃろ。後で覚えておけよ、何て夏穂に向けて暴言を吐く。
「何か言ったらどう!?」
理不尽にもほどがある先輩方に、私はただ薄い笑みを浮かべることしかできない。
死んだ魚の目になっていないことを切実に祈るが。
「そもそもね!?まっくんって今や全国にファンがいるのよ!?そのまっくんを今まで支えていたのはこのあたし達よ!?もう4年もよ!?なのに何で顔がいいからって今出てきたようなあんたにまっくんを取られなきゃいけないの!?」
……ごもっともです、はい。
先輩の中学時代から先輩を支えているファンクラブなるものが存在していることは有名だ。
しかもファン歴というよく分からないものに年功序列的なのが付いていて、まぁ長く応援し続けているとそれだけ地位が高いという事らしい。
先輩が仕事があるたびにノートをちゃんととり、差し入れをし、イベントなどがあるとどんなところへも必ず応援に駆け付けているというのだから熱意はとても凄いと思う。
何で知ってるのかは知らないけど、夏穂の話ではイベントに行く費用も遠い場所だとかなりかかるらしいし、ファンクラブに月々いくらか払わないといけないという随分お金がかかる組織みたいだ。
でもだからって、付きまとわれている側の私にこうやって不満を言うのはお門違いにもほどがあると思う。
「今までどんな思いで…どんな思いでまっくんを好きでいると思ってんの!?!?!?」
今日一の金切り声が教室に響き、知らねーよと内心思った時……。
ばっちん!と言う音と共に、頬に鋭い痛みが走った。
今まで逸らしていた視線を、ゆっくりと先輩たちの方へ向ける。
一人の先輩が顔を真っ赤にして、私を強く泣きそうな目で睨んでいた。
「ふざけないで!!!!!!」
じんじんと痛む頬に手を当てる。
………痛い。
マジで、痛い。
でもどこか懐かしくさえ感じてしまう痛みだった。
"自分を大切にしろってあれほど言っただろ!?"
じんわりと、表現しがたいものが心の中に流れ込む。
デジャヴ。
先輩と視線が絡んだ。
「な、なによっ!?あんたが悪いんでしょ!?あたしっ、悪くないから!」
………あぁ。
もう
本当最悪。
まだ頬は痛む。