教室で愛を叫ぶ










「………おい、何で上級生が2年の教室なんかにいる?何してたんだ?」











「………ぇ、あの…」












「あとでお前たちの担任通じて話聞くから、覚悟はしとけよ?」











「い、いや!違くて!」









「言い訳は後で聞く。ほら、さっさと自分たちの教室戻れ。授業始まるぞ」











低く唸るように先輩たちにそう言った先生。










先輩たちの足音が自分の近くで聞こえたとき、体が強張ったが先生がそっと肩を叩いてくれた。













「……もう、大丈夫」












そう言ってそっと先生から離れる。









周りに人がいるのに、先生に抱き着いてなんかいられない。










ゆっくりと背の高い先生の顔を見上げると、困ったように笑っているだけだった。













「……顔は大丈夫じゃなさそうだなあ」











「……ブスみたいな言い方ヤメテよ。でも、すんごいヒリヒリする。痛い」












ぶわっと溢れそうになる涙をぐっとこらえる。















先生はしゃがんで目線を私に会わせて、少し顔を近づけてきた。












「……触るぞ?」








私の了承を得る前に、先生の冷たい手がひんやりと私の頬に触れた。













「痛いか……って、痛いよなぁ」












そして直ぐに離される手。











「保健室行くか」











先生の決定に、離れそうになった先生のスーツの裾を軽くつかむことで同意を表した。












「……先生つてきてよ」










小さくぼそぼそと言うと、先生はポンポンと私の頭を撫でて。












「行くか」










ただ笑った。














私が掴んでいる袖を、先生は離そうとはしなかった。










ゆっくりと先生に押され教室に出る途中、心配そうに私を見る夏穂を見かけた。










できるだけ私の大切な子を安心させたくて、強張っているだろうけど笑顔を向けた。












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