教室で愛を叫ぶ
「失礼します」
コンコン、と先生がドアをノックして保健室に入る。
私も続き、ドアを閉めたのだが…。
「……不在か」
先生の声にくるりと保健室のなかを見まわすと、いつもいるはずの保健室の先生はいなかった。
「まぁいいか」
先生はそうつぶやきながらごそごそと棚をあさりだした。
私は少し落ち着けてきたことで、先生のスーツにしわを作ってしまっていることに気づきそっと名残惜しいが手を離した。
………あぁもったいない。
なんて思っても離してしまったのだから仕方がない。
「湿布は目立つからこれ塗って……の前に少し冷やすか」
先生はなにやら塗り薬のようなものを取り出したが、直ぐに何を思いついたのか冷蔵庫の方へスタスタと歩いて行った。
そして持ってきたのは保冷剤。
「ほら、これで冷やせ」
先生はそう言いながら自分のスーツのポケットから綺麗なハンカチを取り出して保冷材に巻き付けた。
そしてそれを私に差し出す。
「……え、先生。ハンカチって…?」
「そのままだとさすがに冷たいだろ。また後で返してくれればいい」
当たり前のようにそう言った先生。
そんな先生の優しさにジーンと感動した。
ゆっくりと保冷剤を受け取る。
そして自分の頬に当てた。
ヒリヒリと痛い頬にひんやりと冷たい感触が広がってただ冷たいだけだが、心はものすごく暖かかった。
「……先生」
小さくそう呟いたあたしに先生は柔らかい声で応える。
「なんだ?」
「…………ありがとう」
先生の顔が見れずに視線を床にさげたまま感謝の言葉を述べた。
恥ずかしさのせいか思ったより小さな声が出てしまった。
ちゃんと先生は聞きとってくれただろうか。
「…………」
先生は無言だ。
聞き取れなっかのだろうか…。
先生の顔を見るために顔をあげようとした時…。
ふわり、と甘い匂いが香った。
ぽんぽんと頭を私は先生に撫でられたのだ。
「俺を頼ればいい」
先生の顔は見えない。
でもその声は今までの中で一番優しい声で。
私の頭を撫でる手もとても優しくて、暖かくて。
先生の一言に心がいっぱいになった。
さっきからずっと我慢していた涙が零れる。
「せん、せぇっ」