散る頃に咲く花

「あなた、本が好きではありませんか?」

「本、ですか?好きですが。どうされました?」

何故私が本が好きということを知っているのかしら。

「前に藤堂君が、あなたの部屋に本が置いてあったと言っていたのを思い出しまして」

きっと、初日のことか、蛙事件のときのことだろう。

「私に、お勧めの本を、貸して頂けないでしょうか?」

「いいですよ」

青葉はそう答えた。

「では、夕餉の後にお部屋へ持って行きますね」

青葉がそう言うと、山南は首を振った。

「女子に越させるなんて事は出来ませんよ。私が行きます」

「そうですか。分かりました。では、好きな物を選んで下さい」

「そうさせて頂きます。ありがとうございます」

そうして山南は去っていった。
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