散る頃に咲く花

沖田は席を立った。

「僕、ちょっと酔っちゃったみたいなんで、席外しますね。伊東さん、ごゆっくり」

沖田はいつものように、目を細めて笑った。

「では、私も失礼致します」

青葉も沖田が出て行った後に続き、部屋を出た。

青葉は終始笑顔だった。

ちゃぷん。

酒で熱くなっていた入れ物を井戸の水で冷やす。

「ふぅ」

青葉は知らず知らずのうちに溜め息をついていた。

上手く出来たかしら。

久しぶりだったから、よく分からないわ。

「すごく上手な演技だったと思うよ」

しゃがみ込む青葉の背中に、聞き知った人の声が聞こえた。
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