散る頃に咲く花

「山南君。どうして脱走なんかしてしまったんだ」

そう山南に問いかけるのは近藤だった。

「私は、私が分からなくなってしまったのです」

白装束姿の山南は穏やかに答える。

「総長として、私は新選組に必要なのか。私の居場所は本当に新選組なのか。分からなくなってしまったのです」

「山南君……。すまん。俺が至らないばかりに。君を……」

近藤は涙を流した。

「近藤さん、あなたがそんなんでどうするのですか。これからも、あなたは新選組の大将なんです。心を強く持ってくださいね」

山南は近藤の手を握った。

「あぁ。あぁ。これからも、ずっと、俺を……」

近藤の言葉は、そこで止まってしまった。
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