散る頃に咲く花

『あげるから、泣かないで』

宗次朗はそう言うと、青葉に紐を握らせた。

そして青葉をあやすように抱き締めた。

そしてすぐに離した。

『なっ!な、な、何をするんどす!」

その時だ、

『青葉!』

という栄助の声が聞こえたのは。

『栄さん!』

青葉は栄助に駆け寄った。

『ごめん青葉。ずっと探してたんだけど見当たらなくて。ずっと一人で寂しかったろう?』

そう言う栄助は大量の汗をかいている。

本当に必死に探してくれていたのですね。

青葉は嬉しくなった。

『うちは大事おへん。宗次朗様がいてくれはったから』

宗次朗の方を振り返ると、宗次朗はもういなかった。
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