散る頃に咲く花

「余り物を食べていただくなんて、本当に申し訳ありません」

青葉はすまなそうに言った。

「いいんだよ。それにあんたを見ながら飯食ってたら、残飯だろうが泥だろうが旨いぜ。お礼に今度俺と……」

「では、」

すると青葉が吉村の声を遮り

「今度、吉村様には残飯をお裾分け致しますね」

と言った。

「じ、冗談だよ、冗談。ははは……」

吉村の笑い声は、部屋に小さく響いて消えた。

その日から隊士達の間で、「女中は天然なのか冷酷なのか」という話で持ちきりになったのは言うまでもない。
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