散る頃に咲く花

「あ~れ、青葉ちゃんじゃ~ん」

このへらへらした口調は聞いたことがある。

掃除中の青葉は振り返ると言った。

「何かご用ですか、吉村様」

「いや~、別に。ただ通りかかったら君がいたからこれは声を掛けなきゃ俺の人生無駄だぜ」

吉村の本気なのか冗談なのか分からない口調のに呆れる。

「あ、あのな、この間飯くわせてもらったお礼だよ」

呆れた顔の青葉に何か言われると思ったのであろう。

吉村が何かを差し出してきた。

「団子、ですか?」

「あぁ。だから、またいつか食わせてくれよな」

吉村はにかっと笑うと、部屋に戻っていった。

団子。

青葉はふいに、藤堂を思い出した。

お元気かしら。

藤堂様も、斎藤様も。

それは数日後、思いもよらない方法で知ることとなる。
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