散る頃に咲く花

「なっ!」

青葉は顔が真っ赤になるのを自分で感じた。

「うち、湯飲み片付けてきます」

青葉は湯飲みを持ち、立ち上がった。

襖を開けるとき、沖田が言った。

「青葉ちゃん、また薬宜しくね」

そんなに満面の笑みで言われると、

「はい」

と微笑み返す他ないのだった。

沖田様は、病気になっても変わらないわね。

心の奥が読めない、不思議な人。

それでも、私の好きな人。

けれど、この気持ちは一生伝えないわ。

それは、自分の気持ちに気づいてすぐに決めたことだった。

沖田様の側にいられるだけで、幸せだから。

青葉は小さく溜め息をついた。
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