散る頃に咲く花
『君を売った男に、酷い扱いをされたのかい?』
青葉は微かに顔に陰を落とした。
『しつこく尋ねようとはしないよ。ただ、私は君の目に光を宿してみたいんだ』
『光を、宿す?』
奥沢は頷いた。
そして青葉の頬を流れる涙を優しく拭った。
『いつか、いつかでいいから、誰かを信じてみてくれ。きっと、君の目に光が宿るのは、その時だろう』
誰かを、信じる。
『うちは、奥沢さんを信じてみたいどす』
奥沢は少し驚いたようだったが、嬉しそうに頷いた。
それからまた歩き続けた。
何回か宿に止まり、やっと奥沢の家に着いた。
『ここが私の家だ。息子が一人いるのだが、出来れば仲良くしてほしいな』
奥沢は、はっはっはと、大きな声で笑った。