散る頃に咲く花

『人を信じようとしても、本当に信じているのか信じていないのか、自分でも分からないだろう?だから、青葉が僕に本物の笑顔を見せてくれたとき、僕を信じてくれたということにしよう』

ただし、と栄助は付け加えた。

『無理して笑うんじゃないよ?心から青葉が笑った顔が見たいんだから』

なるほどと青葉は思った。

青葉が心からの笑顔を栄助に見せた時を以て、青葉は人を信じることが出来たということになるのだ。

きっと、京での出来事を忘れることが出来れば、いや、記憶から薄くなってゆけば、心にのし掛かる何かが落ち、心から笑うことか出来るだろう。

だから、標準語を覚えることを、誰かを信じる第一歩にしよう。

そう思ったのだった。
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