散る頃に咲く花

墨屋を出たとき、沖田に話し掛けられたら。

「ありがとね、青葉ちゃん」

「いえ、ただ、京の人間は東言葉を嫌う方もいるので気をつけてください」

「そうみたいだね、ありがとう」

沖田はにっこりと笑った。

「じゃあ、お礼に何かあげるよ。どれがいい?」

沖田ばかり、先程青葉が見ていた小物屋を指差した。

「いえ、お礼なんて頂くほどのものではありませんし」

青葉が手を降ったが、沖田は話を聞かずに、お店之中に入ってしまう。

青葉は入り口にある先程の紐に一瞬目を向けた。

「それがいいの?」

「え?」

沖田は青葉がちらりと見た紐を手に取った。

「いえ、そういう訳では……」

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