散る頃に咲く花

「どうして、気づいてくれないの?」

沖田は呟いた。

気づく?

それは私に言っているのかしら?

それとも、私の向こうに見える、あの女の子?

青葉は全く言葉の意味が分からなかった。

そして、抱き締められているとき、青葉はあることを思った。

この抱き締め方、誰かに似ている。

……栄さんだわ。

宝物を包むように、けれど、とても強く、強く抱き締める。

栄助が新選組に行った日のことを思い出していた。

けれど、今私を抱き締めている人は、栄さんではない。

青葉は悲しくなった。

その途端、涙が溢れた。

「ふっ……。栄、さん……」
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