迷宮ラブトラップ
六月
 6月に予約を入れてもらい、初めて噂のS刺激(裸で直接さわる)というものをお願いした。

「裸になることに抵抗ある人もいるから、無理にとは言わないよ。」

遼也はそう前置きしたけれど、瑞香は特に抵抗はなかった。
すでに2人の子持ちで、自分自身も看護師という職業に就いた経験があるため医療従事者に肌を見せることぐらいどうって事ないと思っていたからだ。

ショーツだけになってバスタオルをかけて横になる。
いつもより時間をかけて筋肉を解され、なるほどこれは効果がありそうだと思った。
何より直接触られる事がとても気持ちが良かった。
いつも子供と一緒だったから、こんな1人の穏やかな時間も欲しかったのかもしれない。

施行の合間に、遼也は己の価値観について話をした。
妻には最初から恋愛感情がなく結婚したこと、結婚後にも他の女性と関係を持ったこと、真剣に好きになってフラれたショックで二回鬱になった事。

だからもう、愛や恋は要らないのだと。

 瑞香は少し混乱していた。なぜそんな話を自分にするのかわからなかった。
だから、適当な相槌しか打てなかった。
それなのに、遼也は問うのだ。

「瑞香ちゃんはそう言う事できる人?」
と。

 瑞香は元来真面目な人間で、遼也が言っている事が冗談なのかどうかさえもわからなかった。
けれど、ついこう聞いてしまった。

「誘っているんですか?」

「そうだよ。」

遼也の目が一瞬だけ真剣になった気がした。
しかしすぐまた元の穏やかな目に戻った。
瑞香は益々混乱した。

 
 
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