春夏秋冬、ときめいて
「おーす」


「あ、いらっしゃいませー」


あれ。

今日はお店に置くお花を買う日じゃないのに。


そんなことで、あたしだけの『距離縮まった記念日』に、思いがけないプレゼントだ、と嬉しくなる。


誰かを好きになるって、本当に凄いこと。


「お店用のお花、追加ですか?」


「んー、今日は。こっちの、これ。これくださいなー」


澤井さんが指差したのは、淡いピンクと白の、小さめのガーベラの花束。


「わー、これ、かわいいですよね。ガーベラって存在感あるから、小さめの方がいいかも!」


……誰にあげるの?


ふと、胸が痛む。


痛みながらも、仕事をするしかない。


「はい、どうぞー」

精一杯の笑顔で、澤井さんに渡す。


「はい、どうぞー」


同じトーンで返される。


「……?」


「こんなこと言うと、気持ち悪いと思われるかもだけど、俺達、仲良くなっていちねーーん」


……嘘。澤井さんも、覚えてた?

「多分、今日辺りだと思うんだよね。俺が凹んでて、柚希に声かけて、丁度……」


へこんでた?そんな風には見えなかった。


「柚希にあの時は救われたなーって」


……違う違う、救われたのは、あたし……。


「……あ、りがとう」


お礼を言うのがやっとで。


あたしは、かわいいガーベラを見つめながら、
幸せな気持ちを味わっていた。


【完】
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