志ーこころー 【前編】─完─
それから少し経った時、あたしの周りでこんな噂が流れ出した
”松野の赤い目を見ると死ぬ。松野を怒らせると、殺される”って
そんなはずはない。あたしは普通なのだ
あたしの目は、お母さんと同じなのだ
それをまっこうから否定されたあたしは、お母さんを恨むほかなかった。
そうでもしないとあたしが壊れてしまいそうだったから。
すると、周りは手の平を返したように、急にあたしに対して親切になった
……それは、あたしに取り殺されたくないから
死にたくないから
怖いから
見え透いた親切は、むしろ罵られるよりも胸をえぐられるような痛みだった
あたしは二度と、普通の子にはなれなかった。
なんで自分はこんな目をしているのだろう
なんであたしのお母さんと父さんは死んでしまったんだろう
しまいには、なんで生きているのだろうと思うようになった
ある日、ほんとうに死んでしまおうと思った
死ねば楽になれると信じた
毎日感じる周りのねちっこく絡みつく視線
死んだらお母さんと父さんに会える
そう思った瞬間、あたしは吸い込まれるように死へと足を踏み入れた