志ーこころー 【前編】─完─


ー山崎sideー










目の前で泣いているこの小さな女の子は、誰にも愛されず、愛されたと思えばすぐに別れが訪れる





そんなこの世の摂理に耐えきれなかった哀れな女の子










この子は、こんなにも我慢していたのだ






自分の中に全てを閉じ込めて、誰にも見られないようにそっと鍵をかけた







けれどもその悲しみはこの子──志乃の中で確実に息づいていた







自分を守るために、





自分が傷つかないように






この世の中を生きていくために身につけた御業







だとしたらこんなにも悲しいことはない









一生、誰とも笑い合う日が来ることなく、孤独と不安に怯えながら死んでゆくのか








そんなの












そう思うより先に、体が動いていた








守ってやりたいと思った







このみんなで。……この、俺自身が。








みんなと笑い会えるように、いつかそんな日がくるように


























どうか今だけは、














この刹那だけは



























この子が安らぎと温もりに包まれていますように













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