志ーこころー 【前編】─完─
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あたしは
みんなの元へ戻らない
そうしなければ、あたしの大事な人達は死んでしまう
あたしはやはり関わってはいけない人間なのだ、と
そう言い聞かせても”でも、”という自分がいる
あたしは、どうすればいいの
梢「志乃はん、もう大丈夫でっか?」
あたしは濡らした手ぬぐいをまぶたから離した
さっきまで冷たくひんやりと冷やしていた手ぬぐいは、もう生温くなっている
梢「志乃はん、やっぱり戻るつもりはない?」
あたしは手ぬぐいを冷たい水の張った桶に突っ込んだ
パシャリ、と、冷たくあたしの指先を冷す
志乃「あたしはね、やっぱりこの時代の人と関わっちゃ駄目みたい。」
パシャリ、パシャリ
桶の中で手ぬぐいを泳がす
ユラユラと揺らめくその様は、あたしの手によって右へ左へと動く