志ーこころー 【前編】─完─
志乃「あ、これ……」
あたしは思い出したように言った
手のひらに転がってチリンと鳴る匂い袋
坂本「ああー!別に気にせんでええがきにぃ~。ぶつかった詫びじゃ!詫び!」
あたしはもう一度掌に(てのひら)に目を落とす
オレンジ色の縮緬(ちりめん)柄の小さな袋からは、金木犀(きんもくせい)のような甘い香りがする
あたしはそれを懐に入れた
志乃「有り難うございます。こんなに綺麗な匂い袋を貰って……」
坂本「なぁ~に!気にせんでええがぁ~!!それよりなぁ、お嬢さん!もしもこの後予定がないならわしにちっくとつきおうてもらえんがかぁ?」
この人はなにを考えているのだろうか……
取り敢えず……これはチャンスが向こうからやってきたと見ていいのか?
ならば
志乃「ええ。暇です」