志ーこころー 【前編】─完─
中岡「待て。」
─グイッ
志乃「ぐぎっ」
なによ!2回も人の首根っこつかんでさ!!あたしは人間よ!!
首が締まらないように、あたしは着物の襟元を掴んで、宙に浮いた足をパタパタとばたつかせた。
中岡「お前なぁ、お前は向こうを知っていても、向こうはお前を知らないんだぞ?」
やれやれ世話が焼ける、みたいな顔で、中岡はあたしをそっと降ろした。
あ、そーか。
あたしは知ってても、向こうは知らないんだよね。
なんだか片想いのように複雑な、けれどもそれでいて興奮するこの感覚は、例えようもなく、自分の中で疼いていて─。