志ーこころー 【前編】─完─
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志乃「ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜……」
松野志乃、16歳
あたしは今、とても感動している。
沖田「……そんなに目を開かなくても、街は逃げたりしませんよ?」
そう言って笑う沖田
なぜあたしが山崎ではなく、沖田とともにいるのかというと……。
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山崎にこい、と言われてついて行ったが、なぜか門のところで沖田に呼び止められて、
『私が行きますよ。今日非番ですし』
と言われ、山崎が「そか、ほな頼む」とだけ言い残し、何処かへ消えてしまった。
なんだか売られた子牛のような気分……。
そして今、沖田と共に京の街を歩いているのだが……
目的を知らないあたし←
こんなにたくさんの人達がいっぱい、しかもお侍さんとか街娘とか長屋に甘味処に飛脚に家族に………………。
すべてが生き生きとして、すべてがリアルにあたしの目に映る
志乃「時代劇のセットみたい……」
こんなにも活気があって、みんなが笑っていて……
なんて幸せそうなんだろう……
志乃「……沖田……」
沖田「なんですか?」
突っ立って目を見開いたままのあたしは
志乃「あたし、この街が好き……」
沖田「……それは……よかったです……」ニコ
この時の沖田の笑顔には、いつもの愛想笑いは全くなかった
志乃「なんだ。ちゃんと笑えるじゃん」ニコ
沖田「え?なんのことです?」
キョトンとしている沖田。
ほんとはお前自身が一番知っているだろうに……
志乃「なんでもなーい。」
行こーぜ、と志乃が前を歩く
待って下さい、と沖田
志乃「さっさとこいよ。置いてくよ?」
颯爽と前を歩き出す。
沖田「それは構いませんけど、志乃さん。
あなた、何処へ行くかもわからないでしょうが。」
志乃はピシっと立ち止まった。