短編集
「くそ……っ!」


おれはコントローラーを投げつけ、リセットボタンをはじいた。

鮮やかな画面が一瞬にして真っ黒になり、すぐにオープニングアニメが始まる。


セーブしていたところからのやり直し。


おれは今まで何度、この“リセットボタン”に助けられてきたことか。


順調にダンジョンを進めていき、先ほどやられてしまったラスボスの元へ。

もうやられはしまい、と、腕まくりをして挑んだ第2戦目。


「なあ、みく。今日のメシ、何にする?」


コントローラーを握りしめたまま、ソファにいるみくに背を向けたまま、おれは尋ねた。

しかし、みくからの返事がない。


「……みく?」





真っ白なソファの上に、みくの姿は無かった。





「……そっか…………」


おれの彼女だったみくは、3日前にこの部屋を出て行った。

こんなおれに、愛想を尽かして。





テレビ画面の中では、いつの間にやら、勇者ボナンザが大魔王バラモフにやられてしまうところだった。

おれはひとつため息をつき、いつものようにリセットボタンに手を伸ばす。



叶うはずもない願いを、神さまに祈りながら。









Fin.


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