22年前のワシントンDC高校生

3.

 いよいよ出発を翌日に迎えた。スーツケースも買った。飛行機の中で睡眠をとるための枕も買った。衛生状態の悪いアメリカのトイレを清潔に使用するための「便座除菌クリーナー」も購入した。
 何がいるのかわからないのだから、荷物はやたらと多い。
 
 1週間ほど前から少しづつ準備してきたスーツケースの中身もほぼ整理でき、さて、明日は早いから寝よう、と、布団に入ったとたん、突然、体が震えてきた。

 あれが武者震いというものだろうか。
 楽しみすぎて怖いのである。
 飛行機は本気で怖い。ジェットコースターにもフリーフォールにも乗る勇気がないくらいの怖がりである。
 落下恐怖症である。

 さらに空想は飛んでいく。
「アメリカ横断ウルトラクイズ」のように、現地でスーツケースが出てこなかったら、どうすればいいのか。

 しかし、あの憧れのクイズ番組で広がっていた大自然や、お姫さまっぽい建物が見られると思うと、わくわくである。しかし、怖くて震えは止まらない。

 結局、この日は、何年振りかで母に手をつないでもらいながら就寝したというありさまであった。

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