22年前のワシントンDC高校生
「ここが成田! 中森明菜の北ウィング!」
 感動するポイントがいささか古い。

「ここからいよいよ海外だね」
「空港はすでに海外じゃないらしいよ。だから伊丹から海外なんだよ」
などと、わけのわからない問答を繰り広げているうちに、出国である。

 出国審査は、当時、パスポートに加え、出国審査証に記入したものを審査員に渡さなければならなかった。この記入用紙は、事前に用意しておくこともできるが、出国審査前に用意された台で、その場で記入することもできた。
「その場で記入はするがいかにスマートに手早く記入するか」
 で、旅慣れ具合がわかったものである。
 
 ちなみに、パスポートの大きさも、今よりやや大きい、旧式サイズである。
 
 この時は、Kちゃんのお母さまが事前に出国審査証を用意してくれていたので、スムーズに出国審査を終えることができ、いよいよ出国である。

 離陸して間もなく夜の帳が下りた。

「日本で未公開の映画が観られるなんて」
 と喜んでいる友人をしり目に、なかなか窓の外から、目が離せない。

 雲の切れ間から見下ろした景色は、海のようである。光ひとつ見えない。飛行機の羽が放つ光を見続ける。

 就寝することもなく、映画もそこそこに、興奮状態のまま、そんな窓の景色を眺めていると、東の空が明るくなってきた。

 夜明けだ。

 雲の下に、陸地が見える。
 アメリカ大陸の上空にいるのだ。

 空が白くさらに明るくなっていく。

 どうやら、陸地は雪景色だ。ロッキー山脈を横切るように走っているようだ。

 もうすぐ、現地に到着してしまう。飛行機を降りなければならない。13時間のフライトなど、あっという間だ。

 眼科の景色が、白から緑に変わったかと思うと、ワシントンD.C.に到着である。
 もう、「成田→ワシントン」のフライトは終わってしまうと思うと寂しい。
 
 
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