おねいさんについて
夏休みに入り、奏多も大学部の長い休暇を持て余していた。

日焼けしたくなかったので海水浴には行かなかったし、体力がある方ではなかったので山にキャンプも行かなかった。

奏多の夏は、毎年そんなもの。

エアコンの効いた涼しい部屋で、特に何をするでもなく過ごす夏。

彼女自身も、また彼女の友人も、そんなに活発な者はいないので、あまり羽目を外した夏休みというのは記憶にない。

それでも、一人暮らしの部屋の新聞受けに天神夏祭りのチラシが入っていると、何だか胸がときめく。

夏らしいイベントもないまま、お盆休みが過ぎようとしている。

夏祭りくらい、浴衣を着て行ってみようか…。

それは大人しい奏多の、ほんの気まぐれだった。

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