おねいさんについて
その日の夕方、天神稲荷。

艶やかな浴衣を纏い、奏多はしずしずと歩く。

天神夏祭りは、毎年狂ったように人が集まるというが、成程納得できる。

祭囃子に紛れて、妖怪なまはげハイパーに恫喝された子供の泣き声が聞こえる。

ガチ泣きだ。

あんなに脅かさなくてもいいような気がするのだが。

この天神夏祭りのメインイベントは、1000万発の打ち上げ花火だそうだ。

考えるだけで見上げる首が疲れてくる。

何というか、騒がしすぎて奏多には向いていないような気がする。

(やっぱり…帰ろうかな)

クルリと向きを変えようとした奏多は。

「あっ」

慣れない下駄のせいなのか。

よろめいて転倒しそうになり。

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